柴犬わっちは今日も八百屋でお仕事。イチゴの売場の立ち上げを任されたのでたくさんの種類を並べるのに悪戦苦闘中。
「わっち!あちらのお客様が呼んでいるよ?」とライオンのゴウ先輩から呼びかけられた。
いつも話しかけてくれるお客さんがわっちと話したいようで、呼んでいるという。
「イチゴの売場がまだできてなくて…。どうしよう…。」と、あたふたするわっちにゴウ先輩は「イチゴは俺に任せろ!わっちはお客さんに行ってきな!」と言い、イチゴ売場を組み始めた。
「あ…ありがとうございます!」とお礼を言ってお客さんと話をしに行くわっち。
しばらくして、お客さんはわっちと話を終えるとニコっとして買い物を済ませ帰っていった。
「ふう~。あの話好きなお客さん、なかなか放してくれなかったな…。イチゴ売場途中でまかせちゃった。ゴウ先輩、大丈夫かな?」と心配するわっちはイチゴ売場へ向かった。
「わっち。遅かったね。売場はもう出来て、商品も出しておいたから大丈夫だよ」とゴウ先輩は言う。
「すごい!お客さんを話してたとは言え、あの短時間でよくできましたね?先輩ありがとうございます!」とわっちがお礼を言うとゴウ先輩はニコっと笑顔で仕事へと戻っていった。
「ゴウ先輩はやっぱすごいな…。ボクはあんなに悪戦苦闘してたのに、お客さんと話しているうちにもうでかしちゃうなんて。ボクは作業が遅いし、このままで大丈夫かな…」そう少し劣等感を抱きながらも仕事を進めるわっちであった。
帰り道。いつも訪れる空き家の庭に寄り道するわっち。
木陰のベンチには町でカウンセラーをしているクマのドン先生がドシッと座り、本を読んでいるところだった。
「こんにちは、ドン先生」
「ん?お!わっちか!今日はもう帰りかい?」とドン先生は読みかけの本を鞄にしまいわっちに話しかけた。
「そうなんだ。今日は先輩がボクの分の仕事をいとも簡単にやってくれて…。それで早く帰れたんだけど、いつも仕事に時間がかかる自分と比べてしまって、なんか劣等感を感じるんだ…」とライオンのゴウ先輩と自分を比べている事を気にしていることを打ち明けたわっち。
「HSPはたくさんの事を考えて深く処理しながら行動するから時間かかかるんだよわっち。それは決して悪い事じゃない」とドン先生はわっちに言う。
「そ、そうなのかな…」としっぽを垂れてドン先生を見つめるわっち。
「そうさ!確かにわっちは先輩より時間はかかるかもしれない。『だから自分は仕事はできない』という劣等感と結び付けているかもしれないけど、それは単なる妄想さ。『時間がかかるけど、正確に仕事ができる』とか『お客さんを優先でしての対応がしっかりできる』など、時間がかかる代わりに経験できることやスキルが必ずあるはずだよ?そう考えていけば、劣っている事と優れている事なんてないんだ。だから、単なる思い込みにに惑わされてはいけないぞ?」とドン先生。
「優劣なんて無いんだ…。ちょっと難しいけど、確かに言われてみればそうかも?」とわっち。
「そうそう!ボクたちは他人と比べては優劣を付けたがるけど、それは妄想なんだよ。だってそれは表裏一体だから。どんなにすごい人とだって、突き詰めて行けば、できる事の総量は同じ。みんな何かは出来ないし、逆に何かの天才でもあるんだ」
「できる事の総量は同じ…。みんな何かの天才か…!何かの格言みたいだね。」とわっちはニコっとした。
すこし元気になったわっちと先生はそれからも仲良く会話を続けるのであった。
つづく