午前中の仕事もひと段落して休憩室の端の席で日向ぼっこしている柴犬わっち。

「この席はお日様がポカポカで気持ちがいいな」そう思いながら眠りに落ちそうになった。

「アハハ!そりゃ面白いな!」後ろから笑い声が聞こえた。ライオンのゴウ先輩だった。

ゴウ先輩は年が近いせいもあり、よく周りから比べられる。仕事はまぁちょっと見切り発車なところもあるけど、思い切りがよく、とても社交的でみんなをよく笑わせている。対するわっちは、繊細でHSPの性質を持っており、仕事は慎重に進めるタイプで細かいところにまで目が行き届く。人づきあいは苦手な方で休憩中は1人で心を落ち着けるのが日課になっている。

「ゴウ先輩はすごいな。あんなにみんなと仲良くできて。ボクにはできないや」とわっちはゴウ先輩に劣等感を抱くこともしばしばだった。

「あ!わっちさん、こんにちは」と話しかけてきたのは、この青果店でアルバイトをしているネコのハナさんだった。ハナさんも休憩室の日の当たるこの席が好きで、たまに一緒にご飯を食べたりする仲だ。

「ゴウ先輩ってすごいよね。みんなと仲良くできて。ボクなんか人づきあいが苦手だからあんな風にみんなと話せるゴウ先輩がうらやましいよ。仕事もボクと違って早いしさ」としっぽをたれ下げて、こぼすわっち。

「ゴウ先輩は面白いですよね。一緒にいると楽しい気分になれます!けど、私はわっちさんとこうして話す方が良いなって思いますよ?」とハナさん。

「え?なんで?ボ、ボクなんか話下手だしさ、面白いことも言えないし…。お世辞で言ってるでしょ?」と怪しむわっち。

「いえ、そこが良いって思う人もいるんですよ。わっちさんは明るくて話が面白いゴウ先輩が良い思っていますよね。でも、私はゆっくり話せる方が好きですし、自分の話を聞いてくれる事の方が嬉しく思うんです。相手からドンドン話してこられると、自分の話も聞いて欲しい!ってなっちゃいますw。相手の話に無理に合わせたり、笑ったりと気を遣って話さなくてもいいから、わっちさんと一緒にいて良いなって思う人もいっぱいいると思いますよ?」

「そっか。周りを盛り上げられる人だけが良いってわけじゃないんだ。頭でそれは分かってはいたんだけど、実際にそうやって言ってもらったのは初めてで…」と少し照れた表情をするわっち。

「そうです!あと、ゴウ先輩は仕事は確かに早いですが、ちょっと雑ですよねw。わっちさんは時間はかかりますけど正確だと思いますよ?自分の長所や短所って、実は自分が思っているのとまったく違う時があるんです。その人やその場面で相手が決めれば良い事なんですよ。だから、大事なのは、ありのままの自分でいることが一番大切ってことです。他の誰かになることなんてできないですから。なる必要もないと思いますし。自分にしかできないこともたくさんあるはずです!自分か自分に〇を付けてあげましょう!全員からの評価なんていらないですよ。きっとその人に合った人から必ず評価されますから!」とハナさんは真剣にわっちを見る。

「ハナさんってすごい感性だよね!すごく元気出たよ!ありがとう!」わっちのしっぽに元気がもどった。

「わっち~。午後からの仕事、手伝ってくれよ。お前がいないと俺1人では無理な仕事なんだ」とゴウ先輩が話しかけてきた。

「ほらね?」とハナさんはわっちに笑顔を向ける。

「今日はほんとにありがとう!」そう言ってわっちは、ゴウ先輩と午後の仕事に取り掛かるのであった。

 

つづく