空が高く、気持ちの良い秋晴れ日。柴犬わっちは、会社の同僚であるライオンのゴウ先輩と町のデパートに買い物に来ていた。

ゴウ先輩はどうやら靴がボロボロになったらしく、新しい靴を一緒に選んで欲しいと、わっちを買い物に誘ったのであった。

 

「おう!わっち。この靴どう思う?履き心地バツグンだぜ!」とゴウ先輩は高そうな靴を持ち上げて、わっちに見せに来た。

 

「おぉ!カッコイイですね!ボクも見てみようかな。どれどれ値段は…。」わっちは値段を見て一瞬凍り付いた。

 

「どうだわっち?お前も買うか?」とゴウ先輩。

 

「こ、これ高すぎません?💦こんなにお金もってないですよ💦ゴウ先輩もそんなにボクと給料変わらないはずじゃ…。」わっちはゴウ先輩の顔を覗き込む。

 

「そうか?ウチ、親父が会社を経営しててさ。金だけはあるんだよね。ま、俺は一度、社会に出てみたかったから継ぐ気はあんまないけどな。」ゴウ先輩はサラッとそう言い、「わっちお前のも買ってやろうか?」と聞いてきた。

 

「い、いやいや💦さすがにそんなに高級なお、お靴は大丈夫ですよ💦ゴウ先輩、自分の分だけどうぞ②」と恐縮するわっち。

 

「そうか?じゃあ、買ってくるわ!」そういってゴウ先輩は、わっち曰く「高級なお靴」を涼しげな顔でレジへと持っていき、会計を待つ人ごみに消えていった。

 

 

買い物を終えた後、2人は屋上のレストランでランチをすることにした。席に着き、腹減ったと連呼するゴウ先輩を横目にわっちはポツリとゴウ先輩に言った。

 

「ゴウ先輩の家ってお金持ちなんですね。羨ましいです。ボクの家は貧乏だから…。」と漏らすわっち。

 

するとゴウ先輩は頭を掻きながら「そうか?俺はわっちのが羨ましいけどな。」と言う。

 

「え?どうしてですか?そんなに恵まれてるのに。ボクに羨ましがられるところなんてないですよ。」とわっち。

 

ふぅ〜とため息をついてから、ゴウ先輩は話始めた。

「ウチは小さいころからお金があったんだが、親父はいつも仕事で家にいなかったんだ。おふくろはオレと目が合うたびに、やれ『勉強しろ、いい学校に入れ、将来は会社を継ぐんだからしっかりしなさい』ってしか言わないんだせ。だから、オレには決められた将来しかないのかよって反発して、ろくに勉強もしなかったし、会社は継がず、今の仕事に就いたんだ。」とゴウ先輩は少しむくれた表情で語った。

 

「そ、そうだったんですね。すみません。事情も知らずに羨ましいとか言ってしまって。」とわっち。

 

「いいんだよ。それに、俺はわっちと出会って人の優しさを教えてもらったんだぜ。今までずっと認められてこなかった俺を、尊敬してくれて、羨ましいって思ってくれて、謝ってくれて、気を使ってくれて…。そんな風に思ってもらったこと無かったしよ。お前と同じ職場で働けて良かったよ!」とゴウ先輩。

 

「そんな…。」わっちは言葉が出なかった。他人よりも自分が劣っている、認められていないと思っていたのは、むしろわっちの方であったが、思わぬゴウ先輩の言葉に一瞬戸惑った。

 

「他人が持っているものって自分の持っているものより良く見えてしまうけど、実は幸せの総量でみんな一緒なのかな?」とわっちはポツリとつぶやく。

 

「わっち。良いこと言うなぁ!きっとそうだぜ!どんなに金持ちでも、俺みたいに優しさに飢えてたり、わっちみたいに心は優しくて色んな事に気付けるのに、自己肯定感が低かったり。きっとどんなに偉人とされる人と自分を比べても、出来ることと出来ないことの総量も一緒なんだと思うな。」とゴウ先輩。

 

「そうですよね。そう考えると自分も偉人とだってそんなに変わらない、すごい存在なんだって思えてきますね!」

 

「そうだぜ!なんか楽しくなってきたな!お!わっち、カレーができたみたいだぜ!早く食べよう!腹減った〜!」

 

そう話し合いながら、ちょっぴり絆が深くなった2人は、美味しそうにお昼ご飯を食べるのであった。

 

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