日差しがおだやかな日。すーっとやわらかな風も心地よい。

休みの日は、お気に入りの庭のフカフカな芝生のポジションを確保してお昼寝するのが日課の柴犬わっち。特に競争相手と言えば、クマのカウンセラーであるドン先生くらいしかいないのだが。

「今日はいい天気だな。何もすることが無い。平和な一日だ…」とお昼寝につこうとすると、茂みの奥から大きな影が近づいてくる気配を感じた。

「おぉ、わっち!先を越されっちゃったな!」とドン先生が現れた。

「先生!今日は最高のお昼寝日和ですよ!」とわっち。

「わっちは休みかい?休みの日はいつもここで寝てるよな。」とドン先生。

「先生こそ、いつもここに来て暇つぶししてるじゃないですか」

2人は笑いながら顔を見合わせた。

「この庭は空気が良いからね。心が落ち着く場所だよねぇ。誰も来ないし。仕事の合間に、本を読んだり、音楽を聴いたり、まぁ、たまに残った仕事をするときもあるかな?わっちはただ寝てるだけかい?」ドン先生が聞いた。

「うん。このふかふかの芝生の感触が最高で」

「休みの日はここで寝るだけ?それはもったいないぞ。身体を休めるのも必要だが、心に栄養を与えることも大切だよ!」ドン先生はわっちを見る。

「心に栄養?よくわかんないけど、休みになると何していいか分からないし、お出かけししようかな!とも思うんだけど、何かすると疲れちゃう気がして、結局何もしない事を選んじゃうんだ…」とわっち。

「まぁ、繊細さんは何もしてないくても、色んなものから情報を受け取って疲れる場合が多いからね。ただ、HSPは悪いほうに考えてしまうから心が繊細ってだけじゃないぞ!わっちも感じている通り、芝生の感触、風の心地よさ、太陽の暖かさ…ここにいるだけでも、他人よりも多くの良いことに気づけているんだ!」

「いつも、この感覚が普通だと思ってたけど、違うの?」

「そうだよ!普通の人は『今日は晴れか』ってくらいで終わる感覚を、HSPは細かく繊細に感じ取ってるということさ!その感覚を逆に利用してみよう。例えば、自分の心がワクワクすること、心が癒されることを手帳なんかに書き留めておくことなんかはおススメだよ!わっちは、何をしている時がワクワクする?心が落ち着く?」ドン先生はわっちに尋ねた。

「う~ん。好きな音楽を聴くとか、走るとすっきりするかな…。お笑いを見るのも好きだし、小さい頃はプラモデルなんかにもハマったかな?」とわっち。

「そうそう!けっこう好きなものあるじゃないか!そんな風に自分の好きなものリストを手帳にかいておいてごらん。そしてちょっと時間が空いた時やお休みの時、手帳をみながら、今日は心が元気だから、音楽を聴こう!今日は心が疲れているから、お笑いを見よう・走って気持ちを切り替えよう、今日は心が浮ついているから、プラモデル作りに集中してみよう!といった具合に、自分の好きなものリストを見て実行し、心に栄養を送るんだよ。もちろん身体や心が何もしたくないという日もあるから、そんな日は1日中寝るってことも必要だよ」とドン先生は説明した。

「そっか。ぼく、休みの日は寝てばっかりだからな…手帳に書いてみようかな」

「うん。心が元気な日は特に、公私の切り替えをしなくっちゃ。自分の好きな事を積極的にやっていこう!そうすることで、仕事の疲れも人間関係での悩みも、ただ寝ているだけの時よりも引きづらなくて済む場合が多いから」ドン先生はにこやかな表情でわっちを見た。

「ちょっとやってみたいかも!さっそく手帳を買いに行こうっと♪先生付き合って!」

「次の仕事の時間までだぞ、わっち!」

そういって二人は追いかけっこをするように庭を後にした。

 

つづく