日差しが柔らかなある日、柴犬わっちはいつもの庭の芝生の上で日向ぼっこ。
「今日は会えるかな?」わっちはカウンセラーであるクマのドン先生を心待ちにしていた。
ガサガサと茂みの奥から、大きな影がこちらに近寄ってきた。
気配ですぐ分かった。「ドン先生!」
頭にかぶさった大量の落ち葉を払いながら彼はニコっとわっちに笑顔をみせた。
「今日は元気そうだね。お休みかい?」とドン先生。
「うん!それよりさ、この前の話の続き聞かせて欲しいな♪」と興味深そうなわっち。
「この前?あぁ、HSPのことかな?」
「うん。この前から自分の事、色々考えていたんだ。小さい頃から頼まれごとをされると頼まれたこと以上の結果を出さないといけないと思い込んで疲れたり、匂いに敏感で気持ち悪くなっちゃったり、相手の事を考えすぎてはっきりモノが言えなかったり…治そうと努力はしてみたんだけど、全然できなくて…。これってHSPだから?」わっちはそう話した。
「そうだねぇ。わっちはHSPの特徴を持ってるよ。けど、わっちが思ってるように悪い事じゃないのは覚えてるかい?それは特徴・性質だから優劣はない。HSPであるかどうかを提唱者のアーロン博士は、【DOES】という4つの性質を持っているか否かと言っているんだ。
※①D(Depth of processing)・・・深く処理する
HSPは多くの事を素早く処理し、普通の人が考えないような深さまで考える。複雑なことや細やかなことを上手に整理し、表面的なことよりも本質的なことによりアプローチする。
※②O (Overarousal)・・・神経の高ぶりやすさ
神経がすぐに高ぶってしまい人よりも早く疲れてしまう。大きな音や光に敏感に反応したり、楽しいことがあってもその刺激で疲れたり、眠れなくなったりする。
※③E(Emotional sensitivity)・・・強い感情反応
HSPは普通の人に比べて感情の反応が大きい。すぐに感動したり、泣いてしまったり。怖い映画や事件のニュースなどが苦手といった傾向にある。共感力が高いので他人の気持ちや考えを察することに長けている。
※④S(Sensory sensitivity)・・・感度の鋭さ
ちいさな音や匂い、また相手の声のトーンや表情など、ささいな違いや刺激に敏感。細かなことに気が付きすぎてしまう感度の鋭さがある。
「こんな性質もっているのがHSP。逆にこの①~④に1つでも当てはまらないものがあるとすれば、HSPではないとも言われているんだ」ドン先生はわっちにそう説明した。
わっちは「なんだか、ボクのことを細かく説明されているみたいでちょっぴり怖い…」と苦笑いで答えた。
「まぁ、わっちは初めてこの庭で会った時からHSPだと感じていたけどね。ここ芝生の感触だったり、仕事での悩み、ボクの気配にすぐ気が付くとことか…色々ね」とドン先生は微笑みながらわっちにそう言った。
「そっかぁ。先生、これからHSPについて色々聞きに来てもいいかな?色々分かったけど、思いとか考えがいっぱい出てきて、今は頭が混乱してて…上手く整理できないんだ」とわっち。
「HSPらしいね!」ドン先生は笑いながら答えた。
「さぁ、だいぶ時間が過ぎちゃったみたいだね」
日が暮れそうな時間帯になり、辺りはオレンジ色に包まれた。途中まで一緒に帰ろうと、大きな身体のドン先生のあとをしっぽを揺らしながら歩きだした。
つづく
※①~④ psychotherapy and the Highly Sensitive Person, Elaine N. Aron /エイレン・N・アーロン著「ひといちばい敏感な子」 /橋大二著「HSCの子育てハッピーアドバイス」をもとに著者作成)