早朝から柴犬わっちはヤギのメェ店長と一緒に仕事をしていた。
「わっち、春野菜の売り場そろそろ組まないといけないな。何を品揃えすればいいか分かってるか?」と店長が聞いてきた。
「え?な、菜の花とかですか?」とわっち。
「それも品揃えしないとな。売り場組んでみるか?」と店長。
「でも、ボク初めてなので…」と不安そうなわっち。
「そうかい?じゃあアイツに頼んでみるかな?」と店長はわっちより先輩のライオンのゴウ先輩に頼みに行ってしまった。
「やば…断るつもりはなかったんだけどな…。先輩にも迷惑かかっちゃうし…。でも春野菜っていっぱいあるしどれをどう売ればいいんだろう?先輩はできるのかな?」と罪悪感にかられるわっち。
そうこうしているうちにお店は開店し、わっちもいつものように品出ししていた。
「そういえば、春野菜の売り場ってどうなったんだろう?」と疑問に思うわっち。意外と広い売り場を通り抜けながら春野菜コーナーへと足を運ぶ。
そこには一生懸命に売り場を作る先輩の姿があった。「あ、先輩ボクも手伝います!」わっちは思わず声をかけた。
「お!おぉ!わっち。今日出勤だっけ?手伝ってくれるなら助かるよ」とゴウ先輩。
「え?ボクそんなに存在感ないかな?」そう苦笑いしながら一緒に売り場を作った。
先輩が一足早く、菜の花やウド、ふきのとう等を仕入れてくれていたおかげで、キレイな春野菜売り場が完成した。
「よかった。少し遅れたけど、売り場できたな!ありがとうわっち。」そう言ってゴウ先輩は自分の仕事に戻っていった。
「8割方、ゴウ先輩が作ったようなもんだけどな。それにしても年があんまり違わないのに、店長からとっさに言われてできるのすごいな。それに引き換え自分は情けない…」とわっちのしっぽに力がなくなった。
休憩時間。いつもの日が当たる窓側の席に座ってご飯を食べていたわっち。隣の席に誰かが座る気配がした。
「わっちさん。今日はお疲れですか?」とアルバイトをしているネコのハナさんだった。
「あ!いや。ちょっとゴウ先輩に迷惑かけちゃった気がしてさ…」と先ほどの春野菜の売り場の件を話すわっち。
「ゴウ先輩も店長から言われてちょっと悩んでいたみたいですよ。ちょうどさっき話してて。でも、わっちさんが手伝ってくれて助かったっていってました!」とハナさんは話す。
「え?そうなの?ボクがすぐに取り掛かれなかったことを、先輩があっさりやっているから罪悪感を感じちゃってて。ゴウ先輩はすごいなぁって。劣等感まで出てきちゃってさ。その先輩でも悩んでたの?」と驚くわっち。
「そうみたいですよ。でも、わっちさんはその劣等感とか罪悪感があったからこそ、先輩を手伝いに行ったんですよね?劣等感があるから努力できるし、罪悪感があるから悩んでる先輩を手伝いに行けたんですよ。一見マイナスに思える事でも『肯定的な側面』を見つけることはできますよね!」とハナさんは言った。
「そうかな?!ハナさんはカウンセラーみたいな事言うね!肯定的な側面を見つける…か。マイナス面も含めて、自分らしさって思えは心がラクになるかもね。」とわっちのしっぽに少し元気が戻った。
「カウンセラーほどではないですけど、そう思いますよ!」とハナさんはニコっと微笑んだ。
「知り合いのカウンセラーにもこうやっていつも諭されてるんだよな…w」と思うわっちなのであった。
つづく