「お疲れさまでした!店長。」柴犬わっちは仕事を終えたので、ヤギのメェ店長に挨拶をした。

「おぉわっち!お疲れ!ところでさ、今日は俺も早く終わったから、ちょっと飲みにいかないか?」とメェ店長が誘ってきた。

最近、店長は新しくオープンしたという町のバーに通っているらしく、従業員を片っ端から誘っているようだった。

自動的に色々な情報を受け取り、普通の人より心も身体も疲れてしまいやすいHSPのわっちは、仕事が終わったら正直リラックスの時間が欲しい。しかし、色んな社員から断られている店長を見ると、誘いを断りづらかった。

「は…はい。わかりました…。」と元気なさげに返事をするわっち。

「お~そうか②!じゃあ、19時に例のバーに集合な!」そう言って、意気揚々と一時帰宅の準備をするメェ店長。

いつもの帰り道。

「はぁ~。断れなかったな。まぁこれも仕事だ、仕方ない、頑張るか!店長も悪い人じゃないし。」そう意気込むわっちに「お仕事お疲れさん!今、帰りかい?」と後ろから声がした。

「あ!ドン先生!」振り返ると大きな身体のクマのカウンセラー、ドン先生が立っていた。

「今日は早いね!仕事早く終わったの?」とドン先生。

「早く終わったのはいいんだけど…」わっちはこれから出かけなくてはいけないこと、あまり乗り気ではない事を説明した。

「そうか!飲み会は人によってはいい気分転換になって、心の疲れが解消するいい機会だけど…わっちは…そんなタイプではないね(笑)」ドン先生は笑いながら言った。

「笑い事じゃないよ~酔った店長を面倒みるの大変なんだから~仕事より疲れちゃうよ~」とむくれるわっち。

「他人に気を使いやすいタイプのわっちには荷が重いのかもね。会社で溜まった疲れを、仕事が終わってからもひきづってしまうと、心がパンクしてしまうよねぇ。精神的に参ってしまう人の傾向としては、人づきあいが良すぎる人、人に気を使って断れない人が多いんだ。そういう意味では『今日は疲れているから、家でゆっくりしたい』『お酒がちょっと苦手で…』と断ってもいいんだよ!そうやって心の健康バランスを保っていこう」とドン先生は優しい眼差して見つめた。

「店長の誘いは断っちゃダメって無意識で思ってた…。でも確かにみんな断ってるよな(笑)」と振り返るわっち。

「そうそう!昔は飲みにケーションなんてよく言ったものだけど、今ではもう死語になってないかい?時代が進んで『個』を大切にする時代に入っているよね。1人1人を尊重する時代だ。だから、わっちも自分の意見を尊重してもっと気軽に生きてもいいんだよ!もちろん、お酒が好きな人はドンドン誘いに乗っかって楽しめばいい!個々が自分に合った楽しみ方をすればいいだけの話だよ!」

「そうだよね…!次からは自分の気持ちはちゃんと聞くようにする!」とわっち。

ドン先生は親指を立てて微笑んだ。

それから、2人はわっちの家まで他愛もない会話をしながら歩いて行った。

 

つづく