とある町の青果店。柴犬わっちは、ライオンのゴウ先輩と一緒に売場に商品の補充をしていた。
「明日はここの売場を変えるからな」とヤギのメェ店長が2人に話しかけてきた。
「うっす!」とゴウ先輩は返事をし、わっちは大きく頷いた。
「さ、品出しを早く終わらせようぜわっち!」とゴウ先輩はいつもの調子で早々と売場に品物を補充していく。
「あ!そんなに出していいのかな?」とわっち。「さっき店長が変えるって言ってましたし?」
「いいだろ?この後もお客さん来るんだし。早くやっちまおうぜ!」とゴウ先輩は商品を山盛りにして去っていった。
「店長がさっき、明日売場変更するって話していたよな。あまり大量に商品が積んであったんじゃ、変更するとき商品の移動が大変なんじゃ…?」そう思い、ゴウ先輩が置いていった商品をある程度整理するわっち。
「わっち!早く商品の注文も終わらせないと帰れないぜ!」とゴウ先輩の呼ぶ声がした。急いで商品を注文するパソコンの前に座り、ゴウ先輩の注文履歴をチラ見しながら、自分の商品の発注をするわっち。
「あれ?ゴウ先輩、売場変更するって言うのに前の売場の商品注文してないか?ちょっと修正しないと…。」数量を訂正して、ゴウ先輩に確認を取るわっち。
「あぁ。それか!それは別の売場で使うから大丈夫だ!わざわざありがとな!」そう言ってゴウ先輩は行ってしまった。
「そうなんだ…。訂正したカ所をまた元に戻さないと…。もう~心配して損したな。それよりゴウ先輩の仕事が気になって自分の仕事が全然進んでない。どうしよう。今日も残業だよ~」と落ち込むわっち。
残業の後、やっと帰宅の途につくわっち。
「はぁ~。何かボク、自分の仕事じゃなくて、他人の仕事が気になって遅くなってないか?」と言い、いつも寄り道する空き家の庭にちょこんと座りこむわっち。
「これをやったら、もしかしたらこうなっちゃうかも…と未来をシュミレーションしながら仕事する傾向にあるからね?HSPさんは!」と後ろから声が聞こえた。
「ドン先生!聞こえちゃった?」とわっちはちょっとびっくりした表情で振り返った。
「ははは!びっくりさせて悪かったね。他人の仕事が気になって自分の仕事が進まないんでしょ?」と町でカウンセラーをしているクマのドン先生がわっちに話しかけてきた。
「そ、そうなんだ…。ドン先生。先生が言うように、先輩の仕事が危なっかしく見えちゃって、つい心配ちゃうんだ。お節介なのかな?とは思うけど、問題に発展する可能性があるんじゃないかって、一度思っちゃうとついフォローに回らないと気が済まないというか…それで結局自分の仕事が遅れちゃうんだよね…」とわっちは言った。
「うん。確かに危険を予測することは大事だね。けど、わざわざ先回りして、未来を予測してまで相手の事をフォローしようとしなくてもいいと思うぞ?相手も考えがあってそうしているのかもしれないし、仮に失敗したとしても相手はそれによって成長するかもしれない」とドン先生はいった。
「確かに、ゴウ先輩も考えて発注はしてたな。それに失敗は相手の成長か…。それは考えもしなかったかもな」そうわっちは思った。
「フォローしそうになったら一度立ち止まって、『それは本当に自分がやるべき仕事だろうか?』『私の仕事には今、余裕があるか?』と自問自答する時間をつくるといい。もちろん、わっちがフォローしないと大惨事になるようなことは対処してあげた方がいいけど、そうでない場合は自分に質問して、フォローが難しければ、声かけだけにしておくのも、自分を救ってあげられるポイントだよ!」
「確かに、自分が動かなくても、声かけだけでも相手は気づくもんね!自分も忙しい時は声かけを心がけてみるよ!」とわっちはしっぽを振った。
「うん。そうだね!相手だって仕事をしっかりやっているんだ。先輩ならなおさら信じていなよ。何とななるもんだからさ!」そう言ってドン先生はニコっとわっちに笑顔を向けるのであった。
つづく