柴犬わっちは勤務先の青果店でせっせと商品を売場に並べていた。すると1人のお客さんが近づいてきた。
「ちょっと!この間の茄子なんだけど、中が変色して食べれなかったんだけど!」とお客さんは少し怒ったような口調でわっちに話しかけてきた。
「あ…申し訳ございません。大丈夫でしたか?ただいま商品をお取替えいたしますので。。。」わっちはドキドキしながら返答した。
「責任者はいないの?話がしたいんだけど?」そうお客さんが言うので、わっちは「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」と急いでヤギのメェ店長を呼んできた。
「いや~お客様、申し訳ございません」とメェ店長はお客様に謝る。わっちは少し遠くからその様子を見ていたが、やや怒り口調のお客様に、わっち自身も怒られているようで、心が締め付けられているようだった。
10分くらい経過しただろうか。店長はお客様に新しい茄子とお詫びの品を添えて対応したようで、お客様の機嫌も治ったようだった。
「わっち。長茄子の鮮度をよく見てきてくれ。中身は見えないから、切ってみてチェックしないと」そう店長はわっちに言い、奥へと歩いて行った。
「はぁ~店長が対応している時、ドキドキしてすごく緊張した。店長が対応してくれたけど、自分も怒られているようで動揺しちゃった」と茄子の鮮度を確認しながら、気持ちが落ち着かないわっち。
仕事が終わった帰り道。わっちはいつも立ち寄る空き家の庭へと向かった。
「今日は怖かったな。思い出すとまだちょっとドキドキしてるかも」と独り言を言っていると、後ろから「ん?どうした?また悩み事かな?」と声がした。
「あ!ドン先生。先生も来てたんですね。」とわっちが言うと「うん。今は休憩中。それより、何だか元気がないね?何かあった?」とドン先生。
「実は…」とクレーム対応をする店長を見て、自分も辛い気持ちになってしまい、引きづってしまうという話をした。
「HSPは脳のミラーニューロンと言われる他人の行動を見て共感する細胞が鋭いと言われているんだ。だから、わっちは人一倍、クレームを言われている店長を見て辛くなるんだろう」とドン先生。
「ミラーニューロン?そんなのがあるんだ。自分たちのお店だから、お客さんからすればボクにも責任はあるんだけど、対応してくれたのは店長だし。なんか、すごく可哀そうでしかも怒られて辛いって言う気持ちになっちゃって」とわっち。
「HSPは感性が鋭いから余計感じちゃうよね。けど、わっちが100怖いと思っても、実際店長は10くらいにしか感じてないかもしれないよ?人それぞれ感じ方は違うから。むしろHSPではない人はわっちが感じている辛さよりも、感じていない事の方が多いからね」とドン先生。
「そう考えた方がいいのかな?その場で見ていると、けっこう辛そうだよ?」とわっち。
「う~ん。わっちは真面目だから、その場に自分もいないと悪いって思っちゃうよね。でも、自分で対応しなければならない場面以外は、トイレに行くとかその場から離れる行動も取った方がいい。離れたところで『怖かったな』と自分の気持ちを受け入れて、落ち着く時間を作ろう。さっきも言ったけど、わっちは怖さ100でも他人からすれば10くらいにしか感じていないかもしれない。自分の感覚を相手にもあてはめない方が心がラクになるよ。とにかくHSPは普通の人より感じてしまうから『相手はそんなに感じていないかもしれない』と捉えて、あえて『その場から離れる』工夫をして自分を守ることも必要だよ」とドン先生は説明した。
「自分を守る…か。ちょっとずつ実践してみようかな」とわっち。
「うん。その後、ずっとネガティブな感情を引きづって仕事をするより、周囲の人たちにとってもいいだろう」とドン先生はわっちを見る。
「確かにそうかも!ドン先生、今日ははありがとう」とわっちお礼を言い、ニコっと笑顔を見せるのであった。
つづく